シリーズ:果実のサイエンス ― シャインマスカットから考察する、フレーバー開発の最前線 ― 第2回(全6回)日本ブドウの栄枯盛衰
2025.08.06 香料コラム
日本産ブドウの栽培は縄文時代に始まり、現在も山梨県を中心に栽培されています。明治時代にはアメリカブドウが導入され、国内の育種家によって日本の風土に適した品種が開発されました。巨峰やシャインマスカットはその代表例です。
日本のブドウ生産は長期的に見ると減少傾向にあり、2024年の結果樹面積(栽培面積のうち果実収穫を目的とするもの)は約16,300ha、収穫量は約164,600tで、前年よりわずかに減少しています。主要産地は山梨・長野・岡山などで、全国の約7割を占めています。品種別では、長年親しまれてきた巨峰に代わり、シャインマスカットが近年急速にシェアを拡大しています。シャインマスカットは皮ごと食べられる手軽さと高糖度、作業性の良さから農家と消費者双方に支持され、2023年には山梨県で巨峰を上回る出荷量となりました。一方、巨峰は豊かな味わいが魅力ですが、皮の処理や栽培の手間が敬遠されつつあります。日本のブドウ市場は、消費者ニーズと生産性のバランスを取る転換期にあると言えそうです。