シリーズ:果実のサイエンス ― シャインマスカットから考察する、フレーバー開発の最前線 ― 第4回(全6回) 日本産ブドウはなぜ香り豊か?
2025.09.19 香料コラム
巨峰は咀嚼時に強い甘く華やかな香りを放ち、その主成分としてエステル類が87%を占めます。一方、シャインマスカットではエステル類は少なく、Linalool、Geraniol、Nerol、Citronellol、α-Terpineolといった脂肪族高級アルコール類が主な香気成分です。これらはフローラルでフルーティな「マスカット香」を構成し、さわやかで立体感のある風味を形成しています。
香気成分分析を統計的分析手法の一つである主成分分析と組み合わせることで、甘味・酸味・渋味と香りの質が風味にどう関与しているか、科学的に把握することができます。
当社では、シャインマスカットに多く含まれるHotorienol(3,7-dimethyl-1,5,7-octatrien-3-ol)という成分をスペシャリティとして開発し、グリーン・フローラル・フルーティな香調を再現することに成功しています。このような成分の組み合わせで、単なる再現ではなく「また食べたくなる」フレーバー体験を設計しています。
次回(第5回)は「シャインマスカットとふるさと納税」の独自考察について触れていきます。