連載 香料業界のAI活用 ② AIは香料業界をどう変えるのか?
2026.09.01 香料コラム
第2回 AIは「香り」をつくれるのか?
~調香をめぐる論点~
香料会社の中核にあるのは、調香師が経験と感性を積み重ねて生み出す「処方」です。無数の原料の組み合わせから狙った香りを設計するこの営みに、AIはどう関わり得るのでしょうか。
理屈のうえでは、AIは膨大な処方や原料の情報を整理・分析し、組み合わせの候補を示すことが得意です。一方で、香りそのものを感じ取り、その良し悪しを判断するのは、あくまで人の感性です。
ここで一つ、立ち止まって考えたい点があります。AIは、多くのデータの中から「もっとも起こりやすい答え」を導く仕組みだといわれます。とすれば、AIが示す香りは平均的で無難なものに寄り、かえって”特徴”が薄れてしまう可能性はないでしょうか。人の心を動かすのは、時に平均から外れた個性なのかもしれません。
もう一つの論点は、AIの力が「学ぶデータの質と量」に左右されることです。これまで積み重ねてきた処方や試験の記録こそが、新しい資産になり得ます。技術の導入そのもの以上に、自社の知識をどう活かせる形に整えておくかが問われているのかもしれません。
AIをめぐっては、「人に取って代わるのか」という見方もあれば、「人の創造性をどう支えるのか」という見方もあります。確かなのは、香りづくりに人が果たしてきた役割の大きさです。その積み重ねを土台に、AIという道具とどう向き合っていくのか。これから時間をかけて考えていくテーマなのだと思います。