ベルギーに根付くチョコレート文化
2026.02.09 香料コラム
もうすぐバレンタインを迎えるこの時期にちなみ、ベルギーのチョコレート文化について、現地での体験を交えて紹介したいと思います。
ベルギーは、世界有数のチョコレート大国として知られています。ピエール・マルコリーニ、レオニダス、ゴディバなど、日本でも馴染みのあるショコラトリーの多くが、この国をルーツとしています。その背景には、19世紀以降に築かれてきたベルギーの歴史と産業の歩みがあります。
ブリュッセルを歩くと、そうした歴史が特別に語られるというより、街の景色や人々の暮らしの中に自然に溶け込んでいることに気づかされます。チョコレートもまた、観光資源であると同時に、日常の延長線上にある存在として受け止められているように感じられました。
チョコレート文化を象徴する場所のひとつが、ブリュッセルのグラン・サブロン広場です。中央駅から南へ坂を上った先、ノートルダム・デュ・サブロン教会の前に広がるこの広場には、名だたるショコラトリーの本店が並んでいます。観光客の姿も多い一方で、どこか落ち着いた空気が流れており、チョコレートが特別視されすぎていない点が印象に残りました。

今回訪れたのは、広場に店舗を構えるヴィタメール本店です。年末の時期ということもあり、外観はクリスマスの装いに彩られていました。ヨーロッパでは年明けまでこの雰囲気が続くことが多く、季節行事が生活の中に自然に組み込まれている様子がうかがえます。
店内には、チョコレートやケーキに加え、クロワッサンやクロックムッシュといったパン類も並んでいました。チョコレート専門店でありながら、日常の食に近い商品構成となっている点は、日本のショコラトリーとは少し異なる印象です。
周囲の客が紙袋いっぱいにチョコレートを選んでいく光景からは、チョコレートが特別な贈答品というより、生活の中に根づいた嗜好品であることが伝わってきます。
選んだのは、ヘーゼルナッツ、パッションフルーツ、バニラ、キャラメルの4種類です。いずれもチョコレートと素材の香りのバランスがよく、甘さや香りが過度に主張することはありません。後味はすっきりとしており、食べ終えた後の余韻まで含めて丁寧に設計されている印象を受けました。
ベルギーのチョコレートに触れて感じたのは、それが「高級品」である以前に、「文化として日常に存在している」という点です。価格の在り方や商品構成、そして人々との距離感。その積み重ねが、ひと粒のチョコレートに自然な説得力を与えているように思われました。
本稿が、今年のチョコレート選びの参考になれば幸いです。
