いつものミカン、その香りを少しだけ深掘りしてみる
2026.02.28 フレーバー開発, 香料コラム

日本の冬を象徴する果実、温州ミカン。その香りは、単なる「柑橘」という言葉では括れない、やさしく親密な個性を備えています。甘さの中に穏やかな酸味が溶け合い、果皮をむいた瞬間に立ち上がる、わずかに青みを感じさせるトップノート。その印象は、こたつや家庭の風景と結びつき、日本人の記憶の中に静かに刻まれているようにも思われます。

香料開発の現場で、国や文化の異なるメンバーと同じチームで温州ミカンをテーマに検討を進めていくと、興味深い気づきが得られることがあります。海外出身のフレーバリストが思い描く「ミカンの香り」が、日本人の感覚ではオレンジに近く感じられるケースが見られるのです。ミカンとオレンジを同系統の柑橘として捉える認識の幅が、香りのイメージにも影響しているのかもしれません。

一方、日本人は両者の違いを比較的自然に感じ取り、共有しているように見えます。温州ミカン特有のやわらかな甘さ、酸味の丸さ、皮由来のほのかな苦味といった微妙な要素の重なりが、「これはミカンらしい」という感覚を形づくっているのではないでしょうか。こうした違いは、幼少期から親しんできた香りの記憶や食経験の蓄積によるものとも考えられます。

温州ミカンの香りは、日本の暮らしと文化に寄り添って育まれてきた、繊細な香り資産です。その個性を多様な視点で見つめ直すことが、香りの価値を次の世代へとつなげていく一歩になるのかもしれません。

👉温州みかんの果汁香(特許第6238349号、特許第6238350号)

👉学会発表 https://www.soda.co.jp/research/news/20131008.htmlhttps://www.soda.co.jp/research/news/20160828_01.html

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